ルソー『新エロイーズ』について

ルソー『新エロイーズ』 フランス文学
ルソー『新エロイーズ』

ジャン=ジャック・ルソー(Jean-Jacques Rousseau、1712年 – 1778年)の『新エロイーズ』(Julie ou la nouvelle Héloïse、原題に忠実なタイトルは「ジュリ、または新エロイーズ」)は1761年に出版された書簡体小説です。この作品は18世紀フランスで最大のベストセラーとなり、ロマン主義文学の先駆けとなりました[1][4]。

物語の概要

物語は、若い貴族の娘ジュリー・デタンジュと彼女の家庭教師サン=プルーの間の情熱的な恋愛を中心に展開します[3]。

主要な登場人物

  • ジュリー・デタンジュ:物語の主人公である若い貴族の娘
  • サン=プルー:ジュリーの家庭教師で恋人
  • バロン・デタンジュ:ジュリーの父親
  • ヴォルマール氏:ジュリーの夫となる人物
  • クレール:ジュリーの従姉妹で親友
  • エドワード・ボムストン卿:サン=プルーの友人

物語の展開

  1. ジュリーとサン=プルーは互いに恋に落ちますが、身分の違いが障害となります[3]。
  2. 二人の関係は深まり、ジュリーの父親が不在の間に肉体関係を持つに至ります[3]。
  3. ジュリーの父親は、友人であるヴォルマール氏との結婚を娘に強要します[3]。
  4. ジュリーは父親の意志に従い、ヴォルマール氏と結婚します。この結婚式の際、ジュリーは「内面的革命」を経験します[2]。
  5. 物語の後半では、サン=プルーがヴォルマール氏の招きによってジュリーの生活に再び登場します[4][5]。

テーマと特徴

  1. 身体と精神の関係:ルソーは、登場人物の身体的状態と精神状態の密接な関係を描写しています。例えば、サン=プルーがアルプスの山々を登るにつれて、彼の情熱が和らぐ様子が描かれています[2]。
  2. 道徳的成長:ジュリーの人生は、純粋な処女性から情熱的な恋愛、そして結婚後の徳高い生活へと変化していきます。この過程で、彼女の身体的特徴も変化し、道徳的成長を反映しています[2]。
  3. 社会規範と個人の欲望の対立:物語は、社会的期待と個人の感情の間の葛藤を探求しています[3][4]。
  4. 自然と徳:ルソーの哲学的思想を反映し、自然と徳の関係が作品全体を通じて探求されています[1]。
  5. 書簡体小説の形式:物語は登場人物たちの手紙を通じて展開され、彼らの内面的な思考や感情を直接的に表現しています[5]。

作品の影響

『新エロイーズ』は、18世紀のフランス社会に大きな影響を与えました。ルソーは、この作品を通じて個人と集団の関係を再概念化し、新しい道徳的パラダイムを提示しました[4]。感情と知性が絡み合うルソーの思想体系を具現化したこの小説は、その後数十年にわたって小説の機能と形式を再定義しました[4]。

この作品は、単なる「感受性豊かな魂」の物語ではなく、身体と精神の複雑な相互作用を探求する深遠な哲学的小説として評価されています[2]。ルソーの登場人物たちは、情熱と美徳の複雑な迷路を巧みに進みながら、魂の純粋さと誠実な道徳性を示しています[4][5]。

『新エロイーズ』は、その複雑な調子と深い洞察によって、出版当時から商業的成功を収め、大陸全体で大きな反響を呼びました。今日でも、18世紀フランス文学の傑作として高く評価されています。

著:ルソー, 翻訳:安士 正夫
¥10,340 (2025/09/11 15:39時点 | Amazon調べ)

Citations:
[1] https://www.les-philosophes.fr/rousseau/du-contrat-social.html
[2] https://muse.jhu.edu/article/218069/summary
[3] https://www.enotes.com/topics/new-heloise
[4] https://press.uchicago.edu/ucp/books/book/distributed/J/bo44894180.html
[5] https://books1001.livejournal.com/31955.html

コメント

  1. […] ルソーが「たったひとつの恋」と称したドゥドト夫人への片思いから生まれたとされ、彼の感情と自然観が色濃く反映されています。asikarazu.com+1コトバンク+1アメーバブログ(アメブロ) […]

タイトルとURLをコピーしました