オイゲン・フォン・ベーム=バヴェルク(ドイツ語: Eugen von Böhm-Bawerk、1851年 – 1914年)の著書『経済的財価値の基礎理論』(Grundzüge der Theorie des wirtschaftlichen Güterwerts)は、1886年に出版された重要な経済学の著作です[1]。この著作は、オーストリア学派の経済理論の発展に大きな影響を与えました。
著作の背景
ベーム=バヴェルクは、カール・メンガーの影響を強く受けたオーストリア学派の経済学者でした。彼はウィーン大学で法学を学び、その後オーストリア政府の大蔵省に勤務しました[1]。『経済的財価値の基礎理論』は、彼がインスブルック大学に勤めていた1880年代に執筆されました。
主要な理論
限界効用理論
本書の中心的な理論は、限界効用理論です。ベーム=バヴェルクは、メンガーの理論を基に、経済的決定が限界的な観点から行われることを詳細に説明しました[1]。
彼は、以下のような例を用いて限界効用の概念を説明しています:
1人の開拓農民が5袋の穀物を持っており、それぞれに異なる用途があるとします。
- 基礎的食糧
- 体力増強のための食料
- 鶏の飼料(食事の変化のため)
- ウイスキー製造の原料
- ペットのオウムの餌
もし農民が1袋の穀物を失った場合、彼は最も効用の低い用途(この場合、オウムの餌)を諦めることになります。これは、経済的決定が限界上で行われることを示しています[1]。
資本理論
『経済的財価値の基礎理論』は、ベーム=バヴェルクの資本理論の基礎となる考えも含んでいます。彼は、生産過程における時間の重要性を強調し、「迂回生産」の概念を導入しました[4]。
迂回生産とは、直接的な生産方法よりも時間がかかるが、より生産性の高い生産方法を指します。例えば、漁村で魚を素手で捕まえる代わりに、一日の消費を犠牲にして網や釣り針を作ることで、翌日以降の漁獲量を増やすことができるという考え方です[5]。
利子理論
本書は、ベーム=バヴェルクの利子理論の基礎にもなっています。彼は、利子が存在する理由として以下の3つを挙げています:
- 将来の所得増加への期待による現在の所得の限界効用の低下
- 心理的要因による財の限界効用の時間経過に伴う低下
- 現在財の将来財に対する技術的優位性
これらの要因により、人々は現在の資源へのアクセスに対して正の利子率を支払う意思があり、逆にそのようなアクセスを手放す場合には利子の支払いを要求するのだと説明しています[5]。
著作の影響
『経済的財価値の基礎理論』は、オーストリア学派の経済理論の発展に大きく貢献しました。特に、限界効用理論と資本理論の分野で重要な役割を果たしました。
この著作は、ベーム=バヴェルクの主著『資本と利子』(Kapital und Kapitalzins)の一部として位置づけられることもあります[1]。『資本と利子』は全3巻からなり、第1巻が『資本利子理論の歴史と批判』(1884年)、第2巻が『資本の積極理論』(1889年)、そして第3巻が『価値と価格』となっています[1]。
ベーム=バヴェルクの理論は、後のオーストリア学派の経済学者たち、特にルートヴィヒ・フォン・ミーゼスやフリードリヒ・フォン・ハイエクに大きな影響を与えました[1][4]。ハイエクは特に、ベーム=バヴェルクの資本理論を基に、1920年代から1930年代にかけて景気循環理論を展開しました[4]。
また、ベーム=バヴェルクの理論は、カール・マルクスの経済理論に対する重要な批判としても機能しました。彼は、労働者の搾取ではなく、生産の迂回性が利子の存在理由であると主張し、マルクス主義経済学に対する有力な反論を提示しました[5]。
結論
『経済的財価値の基礎理論』は、オーストリア学派の経済理論の発展に重要な役割を果たした著作です。限界効用理論、資本理論、利子理論などの基本的な概念を提示し、後の経済学者たちに大きな影響を与えました。この著作は、現代の主流派経済学では直接的には参照されることは少なくなっていますが、その影響は経済学の発展の中に深く根付いています。
Citations:
[1] https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%AA%E3%82%A4%E3%82%B2%E3%83%B3%E3%83%BB%E3%83%95%E3%82%A9%E3%83%B3%E3%83%BB%E3%83%99%E3%83%BC%E3%83%A0%EF%BC%9D%E3%83%90%E3%83%B4%E3%82%A7%E3%83%AB%E3%82%AF
[2] https://mises.org/book/export/html/64055
[3] https://ideas.repec.org/s/jns/jbstat31.html
[4] https://www.hetwebsite.net/het/profiles/bawerk.htm
[5] https://www.econlib.org/library/Enc/bios/BohmBawerk.html



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