ルソー『孤独な散歩者の夢想』について

ルソー『孤独な散歩者の夢想』 西洋哲学
ルソー『孤独な散歩者の夢想』

ジャン=ジャック・ルソー(Jean-Jacques Rousseau、1712年 – 1778年)の『孤独な散歩者の夢想』(Les Rêveries du promeneur solitaire)は、18世紀フランスの哲学者ルソーが晩年に執筆した自伝的作品です。1776年から1778年にかけて書かれ、ルソーの死後1782年に出版されました[1]。

作品の構成と内容

本書は10章からなり、各章は「散歩」(”Promenades”)と呼ばれています。最初の7章は完成されていますが、第8章と第9章は未改訂、第10章は未完成のまま残されました[1]。

ルソーは孤独な散歩中に浮かんだ思索や回想を綴っています。その内容は自伝的なエピソード、パリ郊外の散歩で目にした風景や植物の描写、教育や政治哲学に関する以前の主張の展開など、多岐にわたります[1]。

主要なテーマ

孤独と自己省察

作品の冒頭で、ルソーは自身の孤独な状況を次のように描写しています:

「この世にたったひとり。もう兄弟も、隣人も、友人も世間との付き合いもなく、天涯孤独の身。私ほど人付き合いが好きで、人間を愛する者はいないというのに、そんな私が、満場一致で皆から追放されたのだ。」[3]

この孤独な状況の中で、ルソーは自己省察を深め、自分自身について考察を重ねていきます。

諦念と平穏

ルソーは「諦念による平穏」を繰り返し強調しています。彼は次のように述べています:

「こうして諦めてみると、これまでの苦痛がすべて埋め合わされるほどの平穏を見つけ出すことができた。この平穏こそ、諦めが私にもたらしたものであり、つらく報われることのない抵抗を続けていたときには、得られなかったものである。」[3]

自然との調和

ルソーは自然の中での散歩を通じて、内面の平和を見出しています。彼は自然を観察し、その美しさに心を癒されると述べています[2]。

徳の探求

晩年のルソーは、「徳」について考察することを自らの使命としています:

「こうした徳の分野での研鑽こそ、私が今後、余生を尽くして実行したい、唯一の有益な探究なのだ。私自身が進歩を遂げ、生まれたときよりも善良になるのは無理にしても、生まれたときよりも徳の高い人間として死ぬことができたら、幸せだと思う。」[3]

作品の特徴と影響

『孤独な散歩者の夢想』は、ルソーの最も美しい作品の一つとされています。各章は独特の音楽的調子を持ち、内部に変奏を含んでいるとも評されています[1]。

この作品は、「夢想」(rêverie)という言葉に肯定的な意味を与えた点でも重要です。それまで「夢想」は「馬鹿げた想像」や「心を占める不安や心配」といった否定的な意味合いを持っていましたが、ルソーはこの言葉に新たな意味を付与しました[1]。

作品の位置づけ

『孤独な散歩者の夢想』は、ルソーの自伝的作品の系譜に連なるものです。『告白』や『ルソー、ジャン=ジャックを裁く』に続く作品として、自己探求の道をさらに進めたものと位置づけられています[4][5]。

本書は、18世紀以降の文学と哲学に多大な影響を与えたルソーの思想の集大成とも言える作品です。孤独な散歩者としての晩年のルソーが、自らの人生を振り返りながら、人間と自己について深く見つめ続けた記録として、今なお多くの読者に深い感銘を与え続けています[4][5]。

Citations:
[1] https://en.wikipedia.org/wiki/Reveries_of_the_Solitary_Walker
[2] https://www.hermitary.com/solitude/rousseau.html
[3] https://note.com/ittokutomano/n/nfc61bb463fdc
[4] https://www.shinchosha.co.jp/book/200701/
[5] https://www.iwanami.co.jp/book/b246723.html

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