ドイツのルター派神学者・宗教哲学者であるエルンスト・トレルチ(Ernst Troeltsch、1865年 – 1923年)の『ルネサンスと宗教改革』は、近代世界の成立過程を新たな視点から分析した重要な著作です。
ルネサンスと宗教改革の対比
トレルチは、ルネサンスと宗教改革を単に「精神の解放」として一括りにせず、それぞれを異質なものとして捉えています[2]。
ルネサンスの特徴
- 「中世から近世にかけての偉大な過渡期の諸現象」として位置づけられる[2]
- 芸術や学問の領域で大きな創造性を発揮
- 特定のエリート層の自由を重視
宗教改革の特徴
- 芸術や学問の領域では偉大な創造に乏しい[2]
- 国民の政治的独立や市民の経済的要求に情熱が向けられる[2]
- 万人の内面的信仰の革新を重視
近代世界の成立とプロテスタンティズム
トレルチは、近代世界の成立におけるプロテスタンティズムの役割を慎重に評価しています。彼は、「プロテスタンティズムによる近代文化の創造について語ることはできない。ただその寄与について語ることができるだけである」と述べています[3]。
歴史学的方法論
トレルチの研究は、単なる精神史・理念史的アプローチを超えて、「社会学的」視点を取り入れています[2]。彼は歴史のさまざまな対立や抗争を重視し、ルネサンスと宗教改革の間の「緊張と対立の感情」に注目しました。
アルトプロテスタンティズムとノイプロテスタンティズム
トレルチは、プロテスタンティズムを「アルトプロテスタンティズム」(初期プロテスタンティズム)と「ノイプロテスタンティズム」(新プロテスタンティズム)に区別しています[3]。
- アルトプロテスタンティズム:中世的な思考様式に固執し、厳格な教会規律を重視
- ノイプロテスタンティズム:啓蒙主義の影響を受け、より近代的な思考を持つ
現代におけるキリスト教の位置づけ
本書でトレルチが取り組んだ重要な問題の一つは、現代におけるキリスト教の絶対性と歴史性をめぐる問いです[2]。彼は、キリスト教が「普遍史的地位」を占めうるかどうかを探求しました。
トレルチの『ルネサンスと宗教改革』は、15-16世紀のヨーロッパにおける思想的変革を詳細に分析し、近代世界の成立過程を新たな視点から描き出した重要な著作といえます。彼の研究は、精神史研究に社会学的視点を取り入れることで、より深い歴史理解を可能にしました。
Citations:
[1] https://www.iwanami.co.jp/book/b270783.html
[2] https://www.lib.fukushima-u.ac.jp/repo/repository/fukuro/R000001464/6-133.pdf
[3] https://www.deutschlandfunk.de/ernst-troeltsch-und-der-liberale-protestantismus-der-100.html
[4] https://bookmeter.com/books/1810
[5] https://booklog.jp/item/1/4003341716


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