聖アンセルムス『プロスロギオン』について

聖アンセルムス『プロスロギオン』 キリスト教
聖アンセルムス『プロスロギオン』

聖アンセルムスの『プロスロギオン』(Proslogion)は、11世紀末に執筆された重要な神学・哲学的著作です。この書は、神の存在を論理的に証明しようとする試みとして知られています。

著作の背景と目的

『プロスロギオン』は、ラテン語で「語りかけ」を意味し、神への祈りの形式で書かれています[4]。アンセルムスは、より単純な方法で神の存在と属性を証明したいという願いから、この著作を執筆しました[1]。彼の目標は、「それ自体以外に何も必要としない単一の論証」を見出すことでした[5]。

神の存在証明

『プロスロギオン』の中心的な議論は、第2章と第3章に展開される神の存在証明です。これは「存在論的証明」として知られるようになりました[5]。

アンセルムスの論証は以下のように要約できます:

  1. 神は「それより大いなるものが何も考えられないもの」として定義される[1]。
  2. この定義は、無神論者でさえ理解できる[4]。
  3. 実在するものは、観念の中にのみ存在するものよりも偉大である[3]。
  4. もし神が観念の中にのみ存在するなら、それより偉大なもの(実在するもの)が考えられることになる[1]。
  5. しかし、これは神の定義と矛盾する。
  6. したがって、神は必然的に実在しなければならない[3]。

この論証は、「観念から実在への飛躍」として批判されることもありますが、アンセルムスは信仰を前提としていることに注意が必要です[3]。

神の属性の証明

アンセルムスは、「それより大いなるものが何も考えられないもの」という概念を用いて、神の様々な属性も証明しようとしました[5]。例えば:

  • 全能:もし神が全能でなければ、より偉大な存在が考えられるため[5]。
  • 正義、自存、不変、永遠、非物質的、単一など:これらの属性がなければ、より偉大な存在が考えられるため[5]。

著作の構成

『プロスロギオン』は26の章から成り、各章で神の異なる側面を考察しています[7]。主な内容は以下の通りです:

  • 神の存在証明(第2-4章)
  • 神の属性の考察(第5-26章):全能、慈悲深さ、正義、永遠性など
  • 神の本質と人間の理解の限界についての省察

著作の意義

『プロスロギオン』は、以下の点で重要な意義を持っています:

  1. 謙遜な姿勢で神学に取り組む模範を示している[4]。
  2. 神の存在の存在論的証明の基礎を提供している[4]。
  3. 神の本性と属性について深い洞察を与えている[4]。
  4. 信仰と理性の関係について重要な示唆を与えている[1]。

影響と批評

『プロスロギオン』は、中世から現代に至るまで多くの哲学者や神学者に影響を与え、議論の対象となってきました。アンセルムスの論証は賛否両論を呼び、トマス・アクィナスやカントなどによって批判されましたが、同時に多くの擁護者も生み出しました[1][2]。

結論として、『プロスロギオン』は単なる哲学的思弁ではなく、祈りと論理的思考が一体となった深い信仰の表現であり、神学と哲学の歴史において重要な位置を占める著作だと言えます[3]。

Citations:
[1] https://repository.kulib.kyoto-u.ac.jp/dspace/bitstream/2433/259179/1/arcs_09_73.pdf
[2] http://whitehead-japan.com/03/taikai/taikai06/nobuhara2006.pdf
[3] https://koumichristchurch.hatenablog.jp/entry/20091006/p1
[4] https://therealzeal.blog/2019/08/07/every-christian-should-read-anselms-proslogion/
[5] https://plato.stanford.edu/entries/anselm/
[6] https://www.worldhistory.org/article/2068/anselms-proslogion/
[7] https://en.wikipedia.org/wiki/Proslogion

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