ベナベンテ『作り上げた利害』について

ベナベンテ『作り上げた利害』 スペイン・ポルトガル文学
ベナベンテ『作り上げた利害』

ハシント・ベナベンテ・マルティネス(Jacinto Benavente Martinez、1866年 – 1954年)の代表作『作り上げた利害』(Los intereses creados)は、20世紀スペイン演劇に大きな影響を与えた喜劇作品です。1907年に発表されたこの作品は、ベナベンテがノーベル文学賞を受賞する15年前に書かれました。

作品の概要

『作り上げた利害』は、人間社会における成功の秘訣が、同情を集めることではなく、周囲に都合のよい利害関係を作り上げることにあるという主題を扱っています。この劇は、登場人物たちの機知に富んだ会話を通じて、利害関係によって動く世相を風刺しています。

物語の展開

物語は、クリスピンとレアンドロという二人の詐欺師が町にやってくるところから始まります。クリスピンは狡猾な召使いの役を演じ、レアンドロを裕福な貴族として偽ります。彼らは宿屋の主人を騙して無料の宿泊と食事を手に入れ、さらにパンタローネという人物から信用で家を借りることに成功します。クリスピンの巧みな嘘によって、レアンドロの偽りの評判は急速に広まります。彼らは町の有力者たちとの関係を築き、特にプンチネッロとその娘シルビアとの交流を深めていきます。レアンドロはシルビアに本当に恋をしてしまい、詐欺を続けることに葛藤を感じ始めます。

テーマと社会批評

この作品は、当時のスペイン社会における資本主義の成熟を反映しています。ベナベンテは、利害関係によって動く社会の姿を鋭く描写し、人々の行動が金銭や利益によって左右される様子を批判的に描いています。作品の中で、クリスピンは「現社会の苦しい必要というものは、最も高潔な男子を謳って賤しい職に就かしめたり、最も高潔な婦人を強いて下等なふるまいに出でしめたりし勝ちですが、この下賎と高潔が同一人物中に混合しては、世間の信用を失わせます」と述べています。これは、社会の矛盾と人間の二面性を鋭く指摘した台詞です。

演劇的特徴

ベナベンテは、この作品で従来のスペイン演劇の伝統から脱却し、より現実的で社会批評的な劇作を目指しました。彼は、大げさな台詞を散文的な対話に置き換え、メロドラマ的要素をコメディに転換しました。また、衝動的な行動を対話の形で表現するなど、新しい演劇表現を追求しました。

影響と評価

『作り上げた利害』は、ベナベンテの最も人気があり、最も優れた作品の一つとして広く認められています。この作品は、スペインだけでなく、世界中の観客に受け入れられ、大きな成功を収めました。批評家エンジェル・フローレスは、この作品の普遍的な魅力について、「俗物根性への批判や、有名な主人公の悪党的な策略が、コペンハーゲンの観客にもモンテビデオの観客にも同じように論理的に感じられる」と評しています。

結論

『作り上げた利害』は、人間社会における利害関係の複雑さと、成功を追求する人々の行動を鮮やかに描き出した作品です。ベナベンテは、この劇を通じて、当時のスペイン社会の矛盾を浮き彫りにすると同時に、人間性の普遍的な側面を巧みに表現しました。この作品は、現代においても社会批評の鋭さと人間洞察の深さで高く評価され続けており、スペイン演劇の近代化に大きく貢献した重要な作品として位置づけられています。

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