ヨーハン・クリストフ・フリードリヒ・フォン・シラー(ドイツ語: Johann Christoph Friedrich von Schiller、1759年 – 1805年)の『ヴァレンシュタイン』(Wallenstein-Trilogie)は、18世紀末に執筆された歴史劇三部作の戯曲です。この作品は、30年戦争中の実在の将軍アルブレヒト・フォン・ヴァレンシュタインの生涯と没落を描いています。
三部作は以下の構成となっています:
- 『ヴァレンシュタインの陣営』(Wallensteins Lager):一幕の序曲
- 『ピッコローミニ』(Die Piccolomini):五幕の悲劇
- 『ヴァレンシュタインの死』(Wallensteins Tod):五幕の悲劇
物語は1633年から1634年の冬を舞台とし、ヴァレンシュタイン将軍と彼の支持者たちの関係が徐々に悪化していく様子を描いています。
『ヴァレンシュタインの陣営』では、将軍の軍隊の日常生活が描かれ、シェイクスピアの『ジュリアス・シーザー』やゲーテの『エグモント』の群衆シーンの影響が見られます。
『ピッコローミニ』では、ヴァレンシュタインが皇帝に反逆し、スウェーデン軍と秘密裏に交渉を始める様子が描かれます。この部分では、シラーが創作した架空の人物マックス・ピッコローミニとヴァレンシュタインの娘テクラの恋愛も描かれています。
『ヴァレンシュタインの死』では、ヴァレンシュタインの反逆が明らかになり、彼の悲劇的な最期が描かれます。オクタヴィオ・ピッコローミニの裏切りにより、ヴァレンシュタインの将軍たちは彼を見捨て、最終的にアイルランド人の将軍バトラーとその部下によって暗殺されます。
シラーは、ヴァレンシュタインを複雑な人物として描いています。彼は権力欲に駆られ、善悪の通常の定義を超越したと信じていますが、同時に勇気と威厳を持つ人物でもあります。
作品のテーマには、自由意志と運命の問題、道徳的正当性の問題、忠誠心の葛藤、権力の乱用などが含まれています。
シラーは、この作品を執筆するにあたり、『30年戦争史』(1791-92)を著すなど、綿密な歴史研究を行いました。この三部作は、シラーの劇作品の中で重要な転換点となり、それ以前の作品とは異なる成熟した古典主義的スタイルを示しています。
『ヴァレンシュタイン』は、シラーの代表作の一つとして高く評価され、ドイツ文学史上重要な位置を占めています。その複雑な人物描写と歴史的背景の巧みな融合は、後世の作家たちにも大きな影響を与えました。


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