ヨーゼフ・フォン・アイヒェンドルフ(Joseph von Eichendorff、1788年 – 1857年)の『大理石像』と『デュランデ城悲歌』は、ドイツロマン主義文学を代表する短編小説です。両作品の内容を以下にまとめます。
『大理石像』(Das Marmorbild)
『大理石像』は1818年に発表された短編小説で、ロマン主義文学の特徴を色濃く反映しています。
物語の舞台と主要登場人物
- 舞台:イタリアのルッカ
- 主人公:フロリオ(若い貴族)
- その他の登場人物:フォルトゥナート(陽気な歌手)、ビアンカ(純真な少女)、ドナーティ(不気味な騎士)、ヴィーナス(大理石像/貴婦人)
あらすじ
若き貴族フロリオがルッカに到着し、フォルトゥナートと出会います。フォルトゥナートはフロリオにビアンカを紹介しますが、フロリオは彼女の好意に気づきません。
ある夜、フロリオは公園で月光に照らされたヴィーナスの大理石像を見つけます。その後、像に酷似した美しい貴婦人と出会い、彼女に魅了されていきます。
仮面舞踏会で、フロリオはギリシャ風の衣装を着た謎の女性と踊り、ビアンカの存在を忘れてしまいます。後日、不気味な騎士ドナーティを通じて貴婦人の邸宅に招かれたフロリオは、彼女の美しさに魅了され、誘惑されそうになります。
しかし、最後の瞬間にフロリオは我に返り、邸宅から逃げ出します。翌日、フロリオはフォルトゥナートと少年(実はビアンカ)と共に町を去り、ビアンカへの愛を認識します。
テーマと象徴
この物語は、官能的な誘惑と純粋な愛の間での若者の葛藤を描いています。ヴィーナスは異教的な官能を、ビアンカはキリスト教的な純潔を象徴しています。
『デュランデ城悲歌』(Schloß Dürande)
『デュランデ城悲歌』は1835/36年の冬に書かれ、1836年に発表された短編小説です。
物語の舞台と主要登場人物
- 舞台:フランス革命前夜のマルセイユ近郊のデュランデ城
- 主要登場人物:ルナルド(猟師)、ガブリエレ(ルナルドの妹)、イポリート・デュランデ(若き伯爵)
あらすじ
デュランデ家に仕える若い猟師ルナルドは、妹ガブリエレが若きイポリート・デュランデ伯爵と密会していることを知ります。ルナルドは二人を見つけ出し、伯爵を撃とうとしますが、誤って妹に軽傷を負わせてしまいます。
ガブリエレは修道院に送られますが、イポリートとの再会を果たし、彼の正体を知ります。その後、ガブリエレはパリのイポリートの後を追います。
フランス革命の動乱が迫る中、老伯爵は城の塔に火薬を集めます。ルナルドの帰還の知らせに驚いた老伯爵は亡くなり、イポリートが城に戻ります。
農民たちとルナルドによる城の襲撃が始まり、革命の混乱とルナルドの個人的な復讐が絡み合います。ガブリエレは恋人を守るためイポリートの外套を着て注意を引きつけ、ルナルドに撃たれます。
最後に、ルナルドは自分の過ちを悟り、城に火を放って自爆し、命を絶ちます。
テーマと社会批判
この物語は、革命前のフランスの階級差を個人的な葛藤を通じて描いています。貴族のイポリートと平民のガブリエレの恋は、社会的に認められず、悲劇的な結末を迎えます。
アイヒェンドルフは貴族の立場から物語を描いていますが、同時に旧態依然とした貴族制度への批判も含んでいます。老伯爵の死は、時代遅れの貴族制度の終焉を象徴しています。
両作品とも、ロマン主義文学の特徴である自然描写の美しさや、現実と幻想の境界の曖昧さ、そして個人の内面の葛藤を巧みに描いており、アイヒェンドルフの代表作として高く評価されています。


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