ヴォルテール(Voltaire)こと、本名フランソワ=マリー・アルエ(François-Marie Arouet、1694年 – 1778年)の『バビロンの王女』(La Princesse de Babylone)と『アマベッドの手紙』(Les Lettres d’Amabed)は、18世紀フランスの啓蒙思想を代表する風刺小説です。
『バビロンの王女』は1768年に執筆されました。物語は、バビロンの王女フォルモザントと羊飼いアマザンの恋愛を軸に展開します。
物語の始まりは、バビロン王ベルスが娘フォルモザントの婿選びのために競技会を開催するところから始まります。エジプトのファラオ、インドの王、スキタイの太守が参加しますが、突如現れた美しい若者アマザンが全ての課題をクリアします。
しかし、神託により王女は世界を巡る旅に出ることになります。アマザンも別の用事で旅立ち、二人は世界中を追いかけ合うことになります。この旅を通じて、ヴォルテールは当時のヨーロッパや世界各地の政治、宗教、社会制度を風刺的に描写しています。
最終的に二人は再会しますが、その過程で様々な試練を経験します。例えば、フォルモザントはスペインで異端審問所に捕らえられそうになりますが、アマザンに救出されます。
この物語を通じて、ヴォルテールは宗教的不寛容、政治的腐敗、社会的不平等などを批判しています。特にカトリック教会や異端審問所への批判が顕著です。
一方、『アマベッドの手紙』は1772年に書かれた書簡体小説です。
物語は、若いインド人アマベッドとその妻アダテの手紙を通して展開します。二人はゴアに旅行中、キリスト教宣教師に騙されて異端審問所に投獄されます。
アマベッドの手紙は、ヨーロッパ社会、特にキリスト教会の偽善と腐敗を鋭く批判しています。宗教的不寛容、政治的抑圧、教会の権力濫用などが主要なテーマとなっています。
ヴォルテールは、アマベッドの目を通して、ヨーロッパの文化や習慣を「外部者」の視点から観察し、批判的に描写しています。例えば、ラテン語での礼拝や聖職者の腐敗、異端審問所の残虐性などが取り上げられています。
両作品とも、ヴォルテールの啓蒙思想の核心である理性と寛容の重要性を強調しています。宗教的狂信や政治的専制を批判し、自由と平等の理想を追求する姿勢が見られます。
また、両作品とも旅行記の形式を取っていますが、これは当時のフランス社会を相対化し、批判的に見るための手法として用いられています。異文化との接触を通じて、自国の文化や制度の問題点を浮き彫りにする効果があります。
『バビロンの王女』と『アマベッドの手紙』は、ヴォルテールの代表的な哲学的寓話として、18世紀フランス文学において重要な位置を占めています。これらの作品は、その鋭い社会批評と風刺的な文体によって、今日でも読み継がれ、研究されています。


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