リョンロット編『フィンランド叙事詩 カレワラ』について

リョンロット編『フィンランド叙事詩 カレワラ』 北欧文学
リョンロット編『フィンランド叙事詩 カレワラ』

エリアス・リョンロート(Elias Lönnrot、1802年 – 1884年)が編纂したフィンランド叙事詩「カレワラ(Kalevala)」は、フィンランドの国民的叙事詩として知られています。19世紀にリョンロートがフィンランドとカレリアの民間伝承を収集・編集して作り上げたこの作品は、フィンランドの文化や国民意識の形成に大きな影響を与えました。

カレワラの内容は、天地創造から始まり、様々な神話的英雄や神々の物語が織り交ぜられています。主要な登場人物には、老賢者ワイナミョイネン(Väinämöinen)、鍛冶屋イルマリネン(Ilmarinen)、冒険者レンミンカイネン(Lemminkäinen)などがいます。

物語は50の歌から構成されており、その内容は以下のようなものです:

  1. 天地創造と主人公ワイナミョイネンの誕生
  2. 大地の耕作と文明の始まり
  3. 英雄たちの冒険や恋愛
  4. サンポ(幸福と繁栄をもたらす魔法の道具)の製作と奪取
  5. クッレルヴォ(Kullervo)の悲劇的な物語
  6. キリスト教の到来を暗示する結末

カレワラの特徴的な点は、リョンロートが民間伝承を単に収集しただけでなく、創造的に編集し、一貫した物語として再構成したことです。彼の創作部分は全体の約5%と言われていますが、これにより散在していた伝承が一つの壮大な叙事詩としてまとめられました。

カレワラの文体は、頭韻を多用し、8音節の詩行を基本とする独特のものです。この「カレワラ調」と呼ばれるリズムは、フィンランド文学に大きな影響を与えました。

カレワラの出版は、フィンランドの文化的アイデンティティの形成に重要な役割を果たしました。当時、フィンランドはロシア帝国の支配下にありましたが、カレワラの存在により、フィンランド人は自分たちの固有の文化を持つ民族であるという意識を強めました。

カレワラの影響は文学にとどまらず、音楽、美術、さらには現代のポップカルチャーにまで及んでいます。作曲家ジャン・シベリウスはカレワラに基づく多くの作品を作曲し、画家アクセリ・ガッレン=カッレラはカレワラの場面を描いた絵画を残しています。現代では、ヘヴィメタルバンドのAmorphis(アモルフィス)がカレワラを題材にしたアルバムを発表するなど、その影響力は現在も続いています。

フィンランドでは2月28日が「カレワラの日」として祝われ、国旗が掲揚されます。これはカレワラの初版が1835年2月28日に出版されたことに由来しています。この日は「フィンランド文化の日」とも呼ばれ、カレワラがフィンランド文化において中心的な位置を占めていることを示しています。

カレワラは、フィンランドの国民的アイデンティティの象徴であるだけでなく、世界文学の重要な作品としても認識されています。その独特の世界観と詩的表現は、多くの読者を魅了し続けており、フィンランドの文化遺産として今も大切に受け継がれています。

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