ラーゲルレーヴ『エルサレム』について

ラーゲルレーヴ『エルサレム』 北欧文学
ラーゲルレーヴ『エルサレム』

スウェーデンの女性作家、セルマ・ラーゲルレーヴ(Selma Ottilia Lovisa Lagerlöf、1858年 – 1940年)の小説『エルサレム』(Jerusalem)は、19世紀末から20世紀初頭にかけてのスウェーデンとエルサレムを舞台に、信仰と移住をテーマにした壮大な物語です。

作品の概要

『エルサレム』は1901年と1902年に2部構成で出版されました。第1部は『ダーラナで』、第2部は『聖地にて』と題されています。物語は19世紀のスウェーデン中部ダーラナ地方の数家族と、エルサレムに移住したスウェーデン人コミュニティに焦点を当てています。

この小説は実際の出来事に緩やかに基づいています。1896年、ダーラナ地方のノース教区から実際にエルサレムへの集団移住が行われました。ラーゲルレーヴは1900年にエルサレムを訪れ、「アメリカ入植地」(American Colony)で取材を行い、この小説の着想を得ました。

物語の展開

物語は、「神の声を聞いた」という農民たちがエルサレムに集団移住するという出来事を中心に展開します。スウェーデン国民の多くは移住者たちに批判的でしたが、ラーゲルレーヴは移住した人々とダーラナに残った人々の葛藤と和解を描きました。

作品は、スウェーデンの伝統的な農村社会と、新しい宗教的理想を追求する人々の対立を描いています。移住者たちの信仰心と、故郷を離れる決断の難しさ、そしてエルサレムでの新生活の困難が生き生きと描かれています。

作品の特徴

ラーゲルレーヴの文体は、魔法のような魅力を持っていると評されています。彼女の語りは、読者を物語の世界に引き込み、登場人物たちの汗の匂い、痛み、飢え、情熱を感じさせるほど生き生きとしています。

また、この作品は単なるフィクションではなく、綿密な取材に基づいています。ラーゲルレーヴは1899年に自らエルサレムへ旅し、「アメリカ入植地」で聞き取り調査を行いました。この経験が、作品に深みと真実味を与えています。

作品の影響と評価

『エルサレム』は、ラーゲルレーヴの代表作の一つとして高く評価されています。この作品により、彼女は1901年に第1回ノーベル文学賞の候補となりました(実際の受賞は1909年)。

作品は国内外で大きな反響を呼び、多くの読者を獲得しました。批評家たちからも高い評価を受け、ホメロスやシェイクスピアに比肩する作品だと称賛されました。

映画化と舞台化

『エルサレム』の影響力は文学の枠を超えて広がっています。1919年と1920年にヴィクトル・シェーストレームによって映画化され、1925年と1926年にはグスタフ・モランデルによって再び映画化されました。また、1996年にはビレ・アウグストが監督を務めた映画版も制作されています。

さらに、ノース(ダーラナ地方)では1959年以来毎年、『エルサレム』の舞台版「インマルスプレン」が野外で上演されており、地域の伝統となっています。

結論

セルマ・ラーゲルレーヴの『エルサレム』は、信仰、移住、文化の衝突といった普遍的なテーマを扱いながら、スウェーデンの農村とエルサレムという具体的な舞台を通じて、人間の魂の深みに迫る作品です。綿密な取材と豊かな想像力、そして魅力的な語りによって、100年以上経った今でも読者を魅了し続けている名作と言えるでしょう。

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