スイスの動物学者、コンラット・ケルレルの著書『家畜系統史』は、人類と共に歩んできた家畜たちの歴史と進化を包括的に扱った重要な文献です。この本は1919年にスイスで出版され、1935年に日本語に翻訳されました。
本書の概要
『家畜系統史』は、犬、猫、馬、豚、ラクダ、牛、山羊、羊などの家畜や家禽類の系統を、野生時代から現代に至るまで概観しています。本書の特徴は、個々の家畜について総括的かつコンパクトにまとめている点にあります。
主な内容
- 家畜化の過程:本書は、ダーウィンの進化論が家畜研究に与えた影響について言及しています。家畜は神の創造物ではなく、人間による長期的な選択と飼育の結果であることを示しています。
- 動物の知性と馴化:ケルレルは、家畜化が動物の知性に与える影響について論じています。例えば、犬は飼い主の性格を反映し、優しく扱われるほど理解力が向上すると述べています。
- 個別の家畜研究:本書は、各家畜の特性や歴史的変遷を詳細に記述しています。例えば、羊は家畜化によって大きく変化し、完全に野生生活を営めなくなった一方で、山羊はそれほど変化していないという興味深い指摘があります。
- 人間と家畜の関係:ケルレルは、家畜が人間にもたらす利益と、人間による家畜の扱いについて考察しています。例えば、牛や駄馬が荷車を引く様子を観察し、なぜこれらの動物が従属を受け入れるのかという疑問を投げかけています。
本書の意義と限界
『家畜系統史』は、家畜研究の古典的文献として広く引用されてきました。しかし、1919年の出版であるため、現代の遺伝学的知見は含まれていません。そのため、本書は家畜研究の歴史を理解する上で重要ですが、最新の科学的知見とは異なる部分があることに注意が必要です。
本書は、人類と家畜の長い共生の歴史を理解する上で貴重な洞察を提供しています。家畜化が動物の行動や生理に与えた影響、そして人間社会の発展における家畜の役割について、深い考察を行っている点で、今日でも価値ある文献と言えるでしょう。


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