ベッカリーア『犯罪と刑罰』について

ベッカリーア『犯罪と刑罰』 法律
ベッカリーア『犯罪と刑罰』

チェーザレ・ベッカリーア(Cesare Bonesana Beccaria、1738年 – 1794年)の『犯罪と刑罰』(イタリア語原題: “Dei delitti e delle pene”)は、1764年に匿名で出版された刑法改革に関する画期的な論文です。この著作は、近代刑法学の基礎を築き、啓蒙思想の理念を刑事司法制度に適用した最初の包括的な著作として高く評価されています[1][2]。

著作の背景と影響

ベッカリーアは、当時25歳のミラノの貴族でした。彼は、17世紀から18世紀にかけての刑罰制度が過酷で、恣意的で、不平等であると批判しました[8]。この著作は、イタリア啓蒙主義の代表作となり、近代的な刑罰理論の基礎を築きました[1]。

『犯罪と刑罰』は、ヨーロッパ全体に大きな影響を与え、フランス、イギリス、ロシアのカタリーナ2世の宮廷など、多くの国で改革の動きを促しました[2]。また、ドストエフスキーの『罪と罰』の構想の源泉ともなりました[9]。

主要な主張

ベッカリーアの主張は以下のようにまとめられます:

  1. 罪刑法定主義: 明確な法律によってのみ裁かれるべきであると主張しました[3]。
  2. 死刑と拷問の廃止: キリスト教の教えに基づき、国家による死刑は自殺と同義であるため禁止されるべきだと主張しました[3]。
  3. 刑罰の目的: 犯罪の予防と再発防止を刑罰の主な目的とし、単なる報復ではないとしました[5][8]。
  4. 刑罰の比例性: 犯罪の重大さに応じた刑罰を科すべきだと主張しました[2]。
  5. 法の平等: 貴族と一般市民の間の刑罰の不平等を批判しました[6]。
  6. 刑罰の迅速性と確実性: 刑罰は迅速かつ確実に執行されるべきだと主張しました[5]。
  7. 教育の重要性: 犯罪予防には教育が重要であると強調しました[1]。

著作の構成

『犯罪と刑罰』は、47の短い章で構成されており、各章が特定のテーマを扱っています[7]。主な章立ては以下の通りです:

  • 刑罰の起源
  • 刑罰権
  • 法律の解釈
  • 犯罪と刑罰のバランス
  • 犯罪の分類
  • 拷問について
  • 死刑について
  • 犯罪の予防方法
  • 教育について[6][9]

理論的基礎

ベッカリーアの理論は、社会契約論に基づいています。彼は、人々が最小限の自由を譲渡して社会を形成し、その結果として刑罰権が生まれたと考えました。しかし、譲渡された自由は最小限であるため、刑罰にも制限が必要だと主張しました[8]。

出版と翻訳

『犯罪と刑罰』は、当初イタリアのリヴォルノで匿名で出版されました。これは、当時のミラノでは啓蒙思想の著作を公刊することが困難だったためです。その後、フランス語やイギリス語に翻訳され、広く読まれるようになりました[3][4]。

しかし、1766年にはカトリック教会の禁書目録に加えられ、200年間そのリストに載り続けました[1]。

現代的意義

ベッカリーアの著作は、現代の刑法学や犯罪学にも大きな影響を与え続けています。彼の主張した多くの原則は、現代の刑事司法制度の基礎となっています。しかし、死刑廃止や判決前身柄拘束の禁止など、現代の日本でも実現できていない提案も多く含まれており、その先見性が際立っています[9]。

『犯罪と刑罰』は、刑法学の古典としてだけでなく、啓蒙思想の歴史を理解する上でも重要なテキストとして評価されています。人間の情念に関する鋭い考察を基に、社会や法律の本質を問い直した点で、現代にも通じる深い洞察を含んでいると言えるでしょう[9]。

Citations:
[1] https://www.prphbooks.com/blog/beccaria
[2] https://en.wikipedia.org/wiki/On_Crimes_and_Punishments
[3] https://ja.wikipedia.org/wiki/%E7%8A%AF%E7%BD%AA%E3%81%A8%E5%88%91%E7%BD%B0
[4] https://www.seps.it/en/node/367
[5] https://www.ojp.gov/ncjrs/virtual-library/abstracts/crimes-and-punishments
[6] https://www.utp.or.jp/book/b306153.html
[7] https://www.goodreads.com/book/show/14623555-dei-delitti-e-delle-pene
[8] https://cccct.law.columbia.edu/sites/default/files/content/pics/Beccarias_On_Crimes_and_PunishmentsA_Mirror_on_the_History_of_the_Foundations_of_Modern_Criminal_Law.pdf
[9] https://www.kinokuniya.co.jp/f/dsg-01-9784130332057
[10] https://tarlton.law.utexas.edu/Index-Librorum-Prohibitorum-Censorship-Law-Books/Dei-Delitti-Delle-Pene

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