イギリスの経済史家、T.S.アシュトン(Thomas Southcliffe Ashton、1889年 – 1968年)の著書『産業革命』(The Industrial Revolution)は、産業革命に関する古典的な研究書として高く評価されています。この本は1948年に出版され、1760年から1830年にかけてのイギリスの産業革命を詳細に分析しています[1][4]。
産業革命の概要
アシュトンは産業革命を、人類の歴史上かつてない大きな転換点として捉えています。彼の見解によると、この時期に工業・農業の生産力が飛躍的に増大し、人々の生活様式が機械化の波によって大きく変貌を遂げました[2]。
アシュトンは産業革命を単なる技術的な変革としてではなく、アイデアの革命としても捉えています。彼は、物質的な要因と知的な要因の両方が産業革命の原動力となったと主張しています[1]。
主要な論点
発明と革新
アシュトンは、産業革命期の発明や技術革新の背景には体系的な思考があったと指摘しています。彼は、多くの革新が偶然の産物ではなく、繰り返しの試行錯誤の結果であると強調しています[1]。
経済的要因
産業革命を可能にした要因として、アシュトンは以下の点を挙げています:
- 土地、労働力、資本の増加
- 石炭と蒸気による燃料と動力の供給
- 低金利、物価上昇、高い利益期待による投資インセンティブ[1]
アイデアの革命
アシュトンは、物質的・経済的要因の背後にある思想的な変革も重視しています。特に、アダム・スミスの『国富論』に代表される自由主義経済思想の影響を指摘しています[1]。
労働者の状況
アシュトンの見解は、産業革命が労働者の生活水準を向上させたとする「楽観説」に分類されます[6]。彼は、産業革命が人類史上初めて一般の人々の生活水準を持続的に向上させる契機となったと主張しています[7]。
しかし、アシュトンは労働者の状況改善が即座に実現したわけではないことも認識しています。彼の分析によれば、1790年から1830年にかけての時期は、労働者の状況が複雑に変化した時期でした[10]。
産業革命の影響
アシュトンは産業革命の影響を広範囲に渡って分析しています:
- 人口増加: 産業革命期の顕著な特徴として、急激な人口増加を挙げています[9]。
- 技術革新: 特に繊維産業、鉄鋼業、蒸気機関の発展に注目しています[3]。
- 社会構造の変化: 工場制度の台頭による労働形態の変化を指摘しています。
- 経済成長: 持続的な経済成長の開始を産業革命の重要な成果として評価しています[5]。
アシュトンの方法論
アシュトンの研究は、実証的なアプローチに基づいています。彼は経済史の立場から、産業革命の過程を詳細に分析し、平明な言葉で説明することを心がけています[2]。
結論
T.S.アシュトンの『産業革命』は、産業革命を単なる技術的変革としてではなく、経済、社会、思想を含む包括的な変革として捉えた点で画期的でした。彼の研究は、産業革命が人類の生活水準を根本的に向上させる契機となったという見方を提示し、後の研究者に大きな影響を与えました[7]。
アシュトンの著作は、産業革命に関する楽観的な見方と連続的な変化を強調する立場を代表するものとして、現在も産業革命研究の基本文献の一つとして高く評価されています[6]。
Citations:
[1] https://blog.rootsofprogress.org/ashton-industrial-revolution-highlights
[2] https://www.iwanami.co.jp/book/b248625.html
[3] https://muse.jhu.edu/article/894787/summary
[4] https://www.kosho.or.jp/products/detail.php?product_id=532513029
[5] https://en.wikipedia.org/wiki/Industrial_Revolution
[6] http://repo.komazawa-u.ac.jp/opac/repository/all/21562/KJ00005115784.pdf
[7] https://www.econlib.org/library/Enc/IndustrialRevolutionandtheStandardofLiving.html
[8] https://cir.nii.ac.jp/crid/1521699230555087616
[9] https://www.jstor.org/stable/2226873
[10] https://ndlsearch.ndl.go.jp/books/R100000002-I000001154030


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