アンヌ=ロベール=ジャック・テュルゴー(Anne-Robert-Jacques Turgot、1727年 – 1781年)の1788年に刊行された『富に関する省察』(正式名称は『富の形成と分配に関する省察』、Réflexions sur la formation et la distribution des richesses)は、18世紀フランスの経済思想を代表する重要な作品です。1766年に執筆され、1769-70年に分冊で出版されたこの著作は、テュルゴーが2人の中国留学生に経済学の基本を講義したものをまとめたものです[3]。
著作の主な内容
経済社会の歴史的変遷
テュルゴーは、経済社会の発展を歴史的に考察し、土地の所有と分配から始まり、社会の階級分化、資本の形成と蓄積、そして貨幣経済の発展までを描いています[3]。
階級構造の分析
テュルゴーは社会を3つの階級に分類しています[2][3]:
- 生産階級(農業従事者)
- 賃金労働者階級(職人や工業労働者)
- 自由処分可能階級(土地所有者)
この分類は、重農主義の影響を受けつつも、より発展した形で社会構造を捉えています。
資本と利潤の概念
テュルゴーは、重農主義を発展させ、資本を循環する貨幣的資本として捉え、農業だけでなく工業や商業においても資本家の機能を認めました[3]。彼は、利潤が全産業で普遍的に成立することを指摘し、資本蓄積の源泉となると論じています。
経済循環の理解
テュルゴーは、農業、工業、商業を通じた経済の再生産を、資本の循環過程として把握しました[3]。この視点は、後のアダム・スミスやデイヴィッド・リカードの経済理論の先駆けとなりました。
貨幣の役割
テュルゴーは、貨幣を「資本の第一の基礎」と位置づけ、貯蓄を投資に転換する重要な要素として捉えています[4]。彼は、金銀が貨幣として機能する理由を、その希少性と価値の安定性に求めています[2]。
利子理論
テュルゴーは、貨幣が利子を生む理由を、生産過程における時間的ギャップを埋めるものとして説明しています[3]。この視点は、後の古典派経済学の利子理論に影響を与えました。
資本形成と投資
テュルゴーは、資本の形成と蓄積のプロセスを詳細に分析しています。彼は、余剰生産物が最初の資本を形成し、その資本が以下のように投資されると考えました[2]:
- 土地の購入
- 工業や製造業への投資
- 農業生産性向上のための資本財への投資
- 商業事業の設立
- 貸付や金融投資
著作の意義
『富の形成と分配に関する省察』は、重農主義の枠組みを超えて、近代経済学の基礎となる多くの概念を提示しました[3]。テュルゴーの分析は、資本主義経済の本質的な特徴を捉え、後の経済学者たちに大きな影響を与えました。
特に、資本の形成と流通に関する洞察は、古典派経済学の発展に重要な貢献をしたと評価されています[3]。テュルゴーの貯蓄・投資理論は、19世紀から20世紀初頭にかけての古典派経済学のテンプレートとなりました[4]。
一方で、テュルゴーは純生産物(剰余)については、依然として農業のみが生み出すという重農主義的な考えを保持していました[3]。また、ジョン・ローの貨幣システムの失敗への反発から、金属貨幣以外の貨幣形態を考慮することに消極的でした[4]。
結論として、テュルゴーの『富の形成と分配に関する省察』は、18世紀フランスの経済思想を代表する重要な著作であり、資本主義経済の理解に大きく貢献しました。その分析は、後の古典派経済学の発展に重要な基礎を提供し、現代の経済学にも影響を与え続けています。
Citations:
[1] https://medialibrary.uantwerpen.be/oldcontent/container42730/files/Kuroki,%20Turgot’s%20Capital%20Theory-367659.pdf
[2] https://en.wikipedia.org/wiki/Reflections_on_the_Formation_and_Distribution_of_Wealth
[3] https://asikarazu.com/20241007-%E3%83%81%E3%83%A5%E3%83%AB%E3%82%B4%E3%82%AA%E3%80%8E%E5%AF%8C%E3%81%AB%E9%96%A2%E3%81%99%E3%82%8B%E7%9C%81%E5%AF%9F%E3%80%8F%E3%81%AB%E3%81%A4%E3%81%84%E3%81%A6/
[4] https://stacks.stanford.edu/file/druid:nz540gq0033/murphy.pdf
[5] https://www.econlib.org/library/Essays/trgRfl.html
[6] https://www.kinokuniya.co.jp/f/dsg-01-9784003410318
[7] https://academic.oup.com/book/26018/chapter-abstract/193896852?login=false&redirectedFrom=fulltext


コメント