カールレ・クローン(Kaarle Krohn)の著作『民俗学方法論』(Die folkloristische Arbeitsmethode)は、民俗学研究において重要な位置を占める著作です。この本は1926年に出版され、民俗学の研究方法に大きな影響を与えました。
著者について
カールレ・クローンは、1863年5月10日に生まれ、1933年7月19日に亡くなったフィンランドの民俗学者です。彼は民俗学研究における地理歴史的方法の開発者として知られています。
『民俗学方法論』の概要
この著作は、クローンがオスロで1924年から1925年にかけて行った講義を基にしています。当初はドイツ語で出版されましたが、その後、英語版が1971年に『Folklore Methodology』というタイトルで出版されました。
地理歴史的方法
クローンが提唱した地理歴史的方法は、民話や伝説などの民俗資料を収集し、その地理的分布と歴史的変遷を分析することで、民俗の起源や伝播の過程を明らかにしようとするものです。この方法は、後のフィンランド学派の基礎となりました。
主な内容
- 民俗資料の収集: クローンは、民話や伝説、歌謡などの民俗資料を広範囲にわたって収集することの重要性を強調しました。
- 比較分析: 収集した資料を地域ごと、時代ごとに比較分析し、その類似点や相違点を明らかにすることを提唱しました。
- 原型の推定: 様々なバリエーションを持つ民話や伝説の原型を推定し、その発展過程を追跡することを試みました。
- 文化圏の特定: 民俗の分布を地図上に示すことで、文化圏を特定し、文化の伝播経路を明らかにしようとしました。
- 歴史的背景の考察: 民俗の変化を歴史的な出来事や社会変動と関連付けて考察することを重視しました。
影響と評価
クローンの方法論は、20世紀前半の民俗学研究に大きな影響を与えました。特に、アンティ・アールネやスティス・トンプソンによる民話タイプ・インデックスの作成に影響を与えたとされています。
しかし、後年になると、この方法論に対する批判も出てきました。特に、文化の複雑性や地域固有の文脈を十分に考慮していないという指摘がありました。
日本への影響
日本の民俗学においても、クローンの方法論は一定の影響を与えました。柳田国男をはじめとする日本の民俗学者たちは、クローンの地理歴史的方法を参考にしつつ、日本の文化的文脈に合わせた研究方法を発展させていきました。
結論
カールレ・クローンの『民俗学方法論』は、民俗学研究の体系化と方法論の確立に大きく貢献しました。地理歴史的方法は、その後の批判や修正を経ながらも、民俗学研究の基礎的なアプローチとして今日まで影響を与え続けています。現代の民俗学者たちは、クローンの方法論を批判的に継承しつつ、より複雑な文化現象の理解に向けて研究を進めています。



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