ユリウス・ヴィルヘルム・リヒャルト・デーデキント(Julius Wilhelm Richard Dedekind、1831年 – 1916年)の著作『数について -連続性と数の本質-』(原題:Stetigkeit und irrationale Zahlen)は、数学の基礎に関する重要な貢献をした古典的な作品です。この著作は1872年に出版され、数学、特に実数の概念に関する革新的なアプローチを提示しました。
著作の背景と目的
デーデキントは1858年、チューリッヒ工科大学で微分積分学の講義を行う中で、算術の真に科学的な基礎の欠如に気づきました。彼の目標は、幾何学的な直感に頼ることなく、純粋に算術的な方法で実数系を構築することでした。
主要な概念:デーデキント切断
著作の中心的な概念は「デーデキント切断」です。これは有理数の集合を2つの部分集合に分割する方法で、実数を定義するために使用されます。
- 有理数の集合Rを2つの非空な部分集合A1とA2に分割します。
- A1の全ての要素がA2の全ての要素より小さくなるようにします。
- A1に最大元がない場合、この切断は新しい数(無理数)を定義します。
この方法により、デーデキントは無理数を含む実数全体を純粋に算術的に定義することに成功しました。
連続性の概念
デーデキントは、有理数系には「隙間」があり、真の連続性を持たないことを示しました。実数系は、これらの隙間を埋めることで得られます。
彼は連続性を次のように定義しました:実数系のどの切断も、ある一つの実数によって生成される。この定義により、実数直線の連続性が純粋に算術的に表現されました。
著作の構成
『数について 連続性と数の本質』は7つのセクションで構成されています:
- 有理数の性質の説明
- デーデキント切断の導入
- 無理数の創造と性質
- 実数系の連続性の証明
- 実数系の演算の定義
- 連続性の応用
著作の意義
この著作は、以下の点で数学の基礎に大きな影響を与えました:
- 実数の厳密な定義を提供し、解析学の算術化に貢献しました。
- 集合論的アプローチを採用し、無限集合を数学的対象として扱いました。
- 構造主義的な視点を導入し、数系を全体として捉えました。
- 後の数学の発展、特に位相数学や実解析学の基礎を築きました。
著作の特徴
デーデキントの説明は非常に明確で、微分積分学への導入としても優れています。彼は複雑な操作の定義が長くなることを認識しつつも、その回避方法についても言及しています。
また、デーデキントは「数は人間精神の自由な創造物である」という哲学的な見解も示しており、数学の基礎に関する深い洞察を提供しています。
結論
『数について 連続性と数の本質』は、実数系の厳密な基礎づけを提供し、数学の発展に重要な役割を果たしました。デーデキントの切断の概念は、現代の実数論の基礎となり、数学の他の分野にも大きな影響を与えました。この著作は、数学の基礎に関心のある読者にとって今なお重要な文献であり続けています。


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