『歴代名画記』(れきだいめいがき)は、中国唐代の高級官僚である張彦遠(ちょう げんえん)が著した画論・画史の著作です[1][2]。この作品は、中国絵画史研究の基本史料として高く評価されており、後世の画論や芸術論に大きな影響を与えました[1][4]。
著作の概要
『歴代名画記』は全10巻から構成されています[2][4]。前半の3巻は叙論であり、大中元年(847年)頃に成立したと考えられています[2]。後半の4巻以降は大中7年(853年)に増補されたと推定されています[2][4]。
前半部分(巻1〜3)
前半部分では、以下のような内容が論じられています[1][2][5]:
- 絵画の源流
- 絵画の興廃
- 画の六法
- 山水画と樹石画の技法
- 師資相承(ししそうしょう:師の教えや技芸を受け継いでいくこと)と南北画派
- 顧愷之(こ がいし)、陸探微(りく たんび)、張僧繇(ちょう そうよう)、呉道玄(ご どうげん)の四大家の用筆法
- 画体、工用、模写の方法
- 絵画の品第と鑑識
- 絵画の収蔵と鑑賞
特に冒頭の「画の源流を叙す」は名文として知られ、この画論の基調をなしています[2]。
後半部分(巻4〜10)
後半部分は画家伝として構成されており、伝説時代から会昌元年(841年)までの歴代の画家370人以上の小伝や作品が年代順に掲載されています[2][4][5]。
『歴代名画記』の特徴
- 画の六法と気韻生動:
張彦遠(ちょう げんえん)は、謝赫(しゃ かく)の提唱した「画の六法」を重視し、特に「気韻生動(きいんせいどう:芸術作品に気品や風格、生き生きとした生命感が溢れていること)」を最も重要視しました[2][3]。これは、作品に生命力と活力を与える「気」の表現を重視する考え方です。 - 勧戒主義:
当時流行していた溌墨などの逸格の風潮を批判し、伝統的な製作規範を尊重する姿勢が見られます[2][4]。 - 歴史的価値:
『歴代名画記』以外に伝えられなかった記事や画論が多く含まれており、文献資料としての価値が非常に高いとされています[2][4]。 - 絵画評価の基準:
張彦遠は、絵画の評価において作者の人格と作品の質の両方を重視しました[6]。特に顧愷之と呉道玄に対して最高の「自然」の評価を与え、呉道玄の作品に自身の「意気説」の体現を見出しています[5]。 - 引用文献の価値:
現在では失われてしまった古典的な画論書からの引用が含まれており、これらの内容を知る貴重な手がかりとなっています[5]。
『歴代名画記』の影響
『歴代名画記』は、中国絵画史研究の基本史料として広く認識されており、後世の画論や芸術論に大きな影響を与えました[1][6]。その評論は、謝赫や張懐瓘など先人の画論や画史を参照しつつ、張彦遠自身の意見を加える方法をとっています[5]。
また、この著作は日本にも伝わり、日本の美術史研究や芸術論にも影響を与えました[6]。
結論
『歴代名画記』は、中国絵画史上最初の本格的な画史書として高く評価されています。張彦遠の深い洞察と広範な知識に基づいて書かれたこの著作は、中国絵画の歴史や理論を理解する上で欠かせない文献となっています。その内容は、単なる画家の伝記や作品の記録にとどまらず、絵画の本質や評価基準、技法論など、多岐にわたる議論を展開しており、中国美術史研究の基礎を築いたと言えるでしょう。
Citations:
[1] https://www.iwanami.co.jp/book/b246611.html
[2] https://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%AD%B4%E4%BB%A3%E5%90%8D%E7%94%BB%E8%A8%98
[3] https://catalog.lib.kyushu-u.ac.jp/opac_download_md/2543242/p269.pdf
[4] https://www.weblio.jp/wkpja/content/%E6%AD%B4%E4%BB%A3%E5%90%8D%E7%94%BB%E8%A8%98_%E6%AD%B4%E4%BB%A3%E5%90%8D%E7%94%BB%E8%A8%98%E3%81%AE%E6%A6%82%E8%A6%81
[5] https://kotobank.jp/word/%E6%AD%B4%E4%BB%A3%E5%90%8D%E7%94%BB%E8%A8%98-151538
[6] https://jinsha.ifohs.kyoto-u.ac.jp/results/339/
[7] https://www.kosho.or.jp/products/list.php?mode=search&search_only_has_stock=1&search_word=%E6%AD%B4%E4%BB%A3%E5%90%8D%E7%94%BB%E8%A8%98
[8] https://japanknowledge.com/introduction/keyword.html?i=1889
[9] https://www.wul.waseda.ac.jp/kotenseki/html/chi03/chi03_01987_0010/index.html
[10] https://www.iwanami.co.jp/book/b259419.html


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