ラスキン『芸術経済論』について

ラスキン『芸術経済論』 芸術理論・美学
ラスキン『芸術経済論』

ジョン・ラスキン(John Ruskin、1819年 – 1900年)の『芸術経済論』(The Political Economy of Art)は、19世紀のイギリスにおける産業革命の影響を背景に、芸術と経済の関係を探求した著作です。この作品は、1857年にマンチェスターで行われた二つの講演を基にしており、ラスキンがその後の生涯を通じて展開する主要な思想が初めて示された場でもあります。

主要な論点

芸術の価値と労働

ラスキンは、芸術作品の価値が単なる市場価格だけでなく、芸術家の労働と才能に基づくべきだと主張しました[1]。彼は、芸術家の労働時間だけでなく、その才能や「天才」の質も考慮に入れるべきだと論じています。

芸術の社会的役割

ラスキンは、芸術を単なる私的な営みではなく、公共の労働として捉えました[1]。彼は、国家が才能ある芸術家を見出し、教育し、支援する責任があると考えました。

芸術の保存と奨励

ラスキンは、過去の芸術作品、特にイタリアの芸術を保存することの重要性を強調しました[1]。同時に、現代の芸術家の作品制作を奨励することも重視しました。

パトロンと芸術家の関係

ラスキンは、パトロンが芸術家を支配すべきだと考え、芸術家の自律性に対して懐疑的でした[1]。彼は、芸術家を「子供のような存在」とみなし、その経済的価値や社会的役割を決定する能力を疑問視しました。

経済学的視点

ラスキンの『芸術経済論』は、当時の主流の経済学的思考に挑戦するものでした[4]。彼は、芸術の価値を単純な市場原理で決定することに反対し、芸術の社会的、文化的価値を重視しました。

文化資本

ラスキンは、現代の文化経済学で言うところの「文化資本」の概念を先取りしていたと言えます[4]。彼は、芸術作品が単なる商品ではなく、社会全体の財産であると考えました。

芸術市場

ラスキンは、芸術市場の機能について批判的な見解を示しました[4]。彼は、芸術作品の価格が必ずしもその真の価値を反映していないと考え、市場原理だけでは芸術の価値を適切に評価できないと主張しました。

社会改革の視点

ラスキンの『芸術経済論』は、単なる芸術論にとどまらず、より広範な社会改革の思想を含んでいます[3]。

労働の喜び

ラスキンは、芸術を人間が労働の中に見出す喜びの表現だと考えました[3]。彼は、産業革命によって分断された労働の在り方を批判し、人間性の回復を訴えました。

国家の役割

ラスキンは、国家が模範的な雇用主となるべきだと主張しました[3]。彼は、競争ではなく協力の精神に基づいた労働環境の創出を提唱しました。

現代的意義

ラスキンの『芸術経済論』は、発表当時は異端視されましたが、その思想は後のウィリアム・モリスなどに影響を与え、現代においても再評価されています[3]。芸術と経済、労働と人間性の関係について、今日でも示唆に富む洞察を提供しています。

結論として、ラスキンの『芸術経済論』は、芸術の経済的側面だけでなく、社会的、文化的、倫理的側面にも深く踏み込んだ先駆的な著作であり、現代の文化経済学や芸術政策にも通じる多くの洞察を含んでいると言えるでしょう。

Citations:
[1] https://victorianweb.org/authors/ruskin/codell.html
[2] https://www.goodreads.com/book/show/863401.Political_Economy_Of_Art
[3] https://www.books.or.jp/book-details/9784880654737
[4] https://read.dukeupress.edu/hope/article-abstract/43/2/275/12450/The-Political-Economy-of-Art-Ruskin-and?redirectedFrom=fulltext
[5] https://shapero.com/en-us/products/john-ruskin-political-economy-art-1857-111574
[6] https://www.kinokuniya.co.jp/f/dsg-01-9784880654737
[7] https://nonsite.org/gold-is-the-new-rossetti-ruskin-and-the-political-economy-of-victorian-avant-garde-art/
[8] https://en.wikipedia.org/wiki/John_Ruskin

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