ヴォリンゲル『抽象と感情移入 -東洋芸術と西洋芸術-』について

ヴォリンゲル『抽象と感情移入 -東洋芸術と西洋芸術-』 芸術理論・美学
ヴォリンゲル『抽象と感情移入 -東洋芸術と西洋芸術-』

ウィルヘルム・ヴォリンガー(ドイツ語: Wilhelm Worringer、1881年 – 1965年)の著書『抽象と感情移入:東洋芸術と西洋芸術』(Abstraktion und Einfühlung)は、20世紀初頭の美術史学に大きな影響を与えた重要な著作です。この本は1907年にヴォリンガーの博士論文として提出され、1908年に出版されました[1][2]。

主要な概念

ヴォリンガーは、芸術表現を「抽象」と「感情移入」という2つの基本的な衝動に分類しました[2][4]。

抽象衝動

抽象衝動は、原始的な人間が自然の混沌とした世界に直面したときに生じる不安から逃れるために、幾何学的で抽象的な形態を求める傾向を指します[3]。この衝動は、世界の複雑さや不確実性から逃れ、安定性と秩序を求める人間の欲求を反映しています[1]。

感情移入衝動

一方、感情移入衝動は、観察者が芸術作品に自己を投影し、作品と一体化する傾向を指します[2]。これは主に有機的、自然主義的な芸術形態に見られ、観察者が作品に自己を見出し、美的な喜びを感じる過程を説明しています[3]。

芸術史の再解釈

ヴォリンガーは、これらの概念を用いて芸術史を再解釈しました。彼は、従来のヨーロッパ中心主義的な芸術観を批判し、非西洋の芸術、特に古代エジプト、ビザンチン、ゴシック、東洋の芸術の価値を再評価しました[2][4]。

文化的コンテキスト

ヴォリンガーは、芸術様式が単なる技術的な進歩の結果ではなく、その文化の精神的・心理的状態を反映していると主張しました[1]。例えば、古代エジプトのピラミッドのような抽象的な形態は、不安定な世界に対する秩序の追求を表現していると解釈しました[3]。

ゴシック芸術の再評価

ヴォリンガーは特にゴシック芸術に注目し、その抽象的な性質を高く評価しました。彼は、ゴシック建築の垂直性や複雑な幾何学的パターンを、精神的な超越への願望の表現として解釈しました[1][5]。

現代芸術への影響

ヴォリンガーの理論は、20世紀初頭の表現主義運動に大きな影響を与えました[2][5]。多くの表現主義芸術家たちは、ヴォリンガーの抽象概念を自らの作品の理論的基盤として採用しました[3]。

表現主義との関係

ヴォリンガーは、表現主義を「主観的にして恣意的なもの、単に個人的に制約されたものの克服」を目指す運動として捉え、それが「原初的なもの」の復活を目指すものであると解釈しました[5]。

批評と再考

しかし、1920年代に入ると、ヴォリンガーは自身の理論を再考し始めます。彼は表現主義の限界を認識し、芸術から学問への移行の必要性を示唆しました[5]。

結論

『抽象と感情移入』は、芸術史の見方を大きく変え、非西洋芸術の価値を再評価する契機となりました。ヴォリンガーの理論は、芸術を単なる美的対象としてではなく、人間の心理的・精神的状態の表現として捉える新しい視点を提供しました。この著作は、20世紀の芸術理論と実践に深い影響を与え、現代でもなお芸術理解の重要な基盤となっています[1][2][3][4][5]。

Citations:
[1] https://de.wikipedia.org/wiki/Abstraktion_und_Einf%C3%BChlung
[2] https://n291.hatenablog.com/entry/20140717/p5
[3] https://shop.glennhorowitz.com/products/worringer-wilhelm-abstraktion-und-einfuhlung
[4] http://www5f.biglobe.ne.jp/~kou/science/item/index40.html
[5] https://note.com/akane_kukita/n/ndf45220f1b61
[6] https://bookmeter.com/books/102290

コメント

タイトルとURLをコピーしました