カール・メンガー(Carl Menger、1840年 – 1921年)は、オーストリアの経済学者。経済学におけるオーストリア学派(限界効用学派)の創始者の一人。彼の著書『経済学の方法に関する研究』(原題: Untersuchungen über die Methode der Sozialwissenschaften und der politischen Ökonomie insbesondere)は、1883年に出版された重要な経済学の方法論に関する著作です。
著作の背景と目的
メンガーは、当時ドイツの学界で支配的だった歴史学派の方法論に対する批判を目的としてこの著作を執筆しました[2]。歴史学派は厳密な経験主義を主張し、普遍的に有効な経済法則の存在を否定していました。これに対しメンガーは、論理的推論によって経済法則を導き出すことができ、それらの法則は普遍的な妥当性を持つと主張しました。
主要な論点
経験的方法と厳密な方法
メンガーは、社会科学研究における二つの方向性を提示しています:
- 「現実的・経験的方向」:個別現象を観察し、経験的法則を導き出す方法[5]。
- 「厳密な方向」:現象を最も単純な要素に還元し、それらがどのように法則に従って構成されているかを研究する方法[5]。
メンガーは、複雑な現象に対しては経験的法則が適しているが、より単純な現象に対しては厳密な理解がより重要であると考えました。
制度と市場プロセスの理論
メンガーは、市場や社会の複雑な現象を「所与」のものとして扱うのではなく、それらがどのように発生し形成されてきたかを説明することが重要だと考えました[4]。彼は、言語、宗教、法、政治組織、貨幣、市場などの社会制度が、個人の自己利益に基づく相互作用の結果として「自然発生的」に生まれたと主張しました。
独占と競争の起源
メンガーは、独占が市場の「自然な」出発点であり、競争はそこから時間をかけて生まれると考えました[4]。彼は、新しい町の形成過程を例に挙げ、最初は各商品やサービスの単一の売り手(独占)から始まり、徐々に競争が生まれていくプロセスを説明しています。
方法論的個人主義
メンガーの方法論は、社会現象を個人の行動と選択に還元して理解しようとする「方法論的個人主義」の基礎を築きました。これは後のオーストリア学派の中心的な考え方となりました[5]。
歴史学派との論争
メンガーの著作は、ドイツ歴史学派との激しい論争を引き起こしました。この論争は「方法論争」(Methodenstreit)として知られ、社会科学の方法論に関する重要な議論となりました[2][6]。
影響と評価
メンガーのこの著作は、経済学の方法論に関する理解を根本的に変え、オーストリア学派経済学の基礎を築きました[5]。彼の主張は、経済現象の複雑さを認識しつつも、論理的推論による普遍的法則の探求の重要性を強調するものでした。
この著作は、経済学史上重要な文献として今日でも高く評価されており、社会科学の方法論に関する深い洞察と鋭い論理を示しています[2]。メンガーの考えは、後のルートヴィヒ・フォン・ミーゼスやフリードリヒ・ハイエクなどのオーストリア学派の経済学者たちに大きな影響を与えました。
結論として、『経済学の方法に関する研究』は、経済学を含む社会科学の方法論に関する重要な貢献であり、理論と経験、個人と社会、歴史と普遍性の関係について深い洞察を提供しています。この著作は、経済学の方法論に関する議論を大きく前進させ、現代の経済学研究にも影響を与え続けています。
Citations:
[1] http://ritsumeikeizai.koj.jp/koj_pdfs/47206.pdf
[2] https://www.iwanami.co.jp/book/b248555.html
[3] http://www.eonet.ne.jp/~bookman/gennkaisyugi/mengermethod.htm
[4] https://thedailyeconomy.org/article/carl-mengers-theory-of-institutions-and-market-processes/
[5] https://dialnet.unirioja.es/descarga/articulo/7450123.pdf
[6] https://www.msz.co.jp/book/author/ma/13948/
[7] https://hermes-ir.lib.hit-u.ac.jp/hermes/ir/re/5408/koten0002200230.pdf
[8] https://mises.org/library/book/investigations-method-social-sciences


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