マックス・ウェーバー(Max Weber、1864年 – 1920年)の『職業としての学問』(ドイツ語原題: Wissenschaft als Beruf)は、1917年11月7日にミュンヘン大学で行われた講演を基にした著作です。この講演は、第一次世界大戦後のドイツという時代背景の中で行われ、学問と職業の関係について深い洞察を提供しています。
本書の主な内容は以下のようにまとめられます:
- 学問の職業化と組織化:
ウェーバーは、ドイツとアメリカの大学システムを比較し、アメリカの大学がより組織化され、資本主義的な考え方が浸透していることを指摘しています。ドイツでは私講師として無給からキャリアをスタートするのに対し、アメリカでは助手として有給で大学組織に所属し、早期から教鞭を執ることが求められます。 - 学者としての資質:
ウェーバーは、学者として成功するためには、自分の専門分野に対する深い情熱と没頭する能力が必要だと主張します。「寝食を忘れて没頭でき、それに喜びを感じられる人」でなければ、職業としての学問に適性がないと述べています。 - 学問の役割の変遷:
古代ギリシャでは「学問はどのように生きるべきかを教えてくれるもの」と考えられていましたが、ルネサンス期には実証実験が重視され、「学問こそが真理にたどり着く究極的なもの」とされました。しかし、20世紀前半には、学問や哲学が日常の課題を解決できないことに人々が失望し、形而上学的な理想を追求する「浪漫主義」が台頭しました。 - 現代における学問の意義:
ウェーバーは、学問の役割を「物事の考え方とそのための用具と訓練を与えるもの」と定義しています。つまり、特定の論理法則に従って、体系的な論理構成のもとで事実を示すことが学問の役割だと主張しています。 - 教師の責務:
ウェーバーは、教師は「予言者や煽動家」であってはならないと強調します。教室では、自分の政治的見解を押し付けるのではなく、知識や学問上の経験を学生に役立たせることが教師の使命だと述べています。 - 科学の価値:
ウェーバーは「科学の価値とは何か」という問いを探求し、科学が説明の方法と立場を正当化する手段を提供するが、その立場がなぜ価値があるのかを説明することはできないと指摘しています。これは哲学の課題だとウェーバーは考えています。 - 科学者の仕事の性質:
ウェーバーは、芸術家の仕事が完成に達することができるのに対し、科学者の仕事は本質的に乗り越えられるべきものであると論じています。 - 科学と価値観の分離:
ウェーバーは、科学は生きる方法や何に価値を置くべきかといった根本的な問いに答えることはできないと主張します。価値は個人的な信念(例えば宗教)からのみ導き出されると考えています。
この講演は、学問の世界における倫理や、科学者としてのキャリアの本質について深い洞察を提供しており、100年以上経った今日でも、その内容は色褪せていないと評価されています。ウェーバーの分析は、現代の科学哲学や学問の在り方に関する議論に今なお大きな影響を与え続けています。




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