スピノザ『知性改善論』について

スピノザ『知性改善論』 西洋哲学
スピノザ『知性改善論』

バールーフ・デ・スピノザ(Baruch De Spinoza、1632年 – 1677年)の『知性改善論』(Tractatus de Intellectus Emendatione)は、17世紀の哲学者による未完の哲学書で、1677年に死後出版されました[9]。この作品は、スピノザの哲学的方法論を確立しようとする試みであり、明晰かつ判明な観念を形成するための方法を模索しています[9]。

執筆の背景と目的

『知性改善論』は、スピノザの初期の著作の一つとされています。近年の研究では、1656年後半から61年前半に書かれた最初期の論考であるという説が有力になっています[8]。アムステルダムでユダヤ人として生まれ、1656年にユダヤ教団から破門されたスピノザが、デカルトやベーコンの哲学を学んだ上で、「神」や無限なる属性としての思考と延長について独自の見解を展開し始めた画期的な著作です[8]。

内容と主題

本書では、知識の問題を検討することを意図していましたが、完成には至りませんでした[9]。スピノザの他の作品と同様に、認識論的な議論は倫理学的な考察と密接に結びついています[9]。

主な内容として以下が挙げられます:

  1. 様々な種類の知識についての考察
  2. 定義に関する詳細な議論
  3. 疑いの本質と原因についての分析
  4. 知覚、経験、知性、記憶、忘却などの主題[9]

スピノザの知識観には、以下の2つの特徴があります:

  1. 知識の能動的性格の強調:観念や概念は、現実を把握する活動の一部であり、現実そのものの一部である[9]。
  2. 知ることと意志することの不可分性:人間は常に自らの理解に従って行動する[9]。

『エチカ』との関連

『知性改善論』には、スピノザの主著『エチカ』のモチーフがはっきりと見て取れます[8]。精神と全自然との合一の認識、永遠無限なるものへの愛、揺るぎない幸福の追求などのテーマは、後に『エチカ』でさらに発展し深化していきます[8]。

哲学的方法論

スピノザは、本書で以下のような方法論を展開しています:

  1. 最高の善の探求:富、名誉、快楽といった一般的な善ではなく、真の最高善を追求することの重要性[6]。
  2. 自然の理解:十分な自然理解の必要性[6]。
  3. 社会の整備:最高の善に至るための社会の整備[6]。
  4. 教育の重要性:子どもたちへの教育の整備[6]。
  5. 医学と技術の発展:健康のための医学の発展と余暇を生み出すテクノロジーの重要性[6]。

知識と自由の関係

スピノザによれば、個物の現実的本質は「自己保存の努力」(conatus se conservandi)にあり、欲望とは人間の自己保存の努力そのものです[7]。しかし、不完全な感覚的認識によって決定される限り、人間は外的対象の支配下にあります[7]。一方で、自己自身の理性的認識によって欲望を決定するとき、人間は自由になれるとスピノザは考えます[7]。

結論

『知性改善論』は、スピノザが「哲学者」になる過程を記録した生々しいドキュメントであると同時に、著者自身による最良の『エチカ』入門でもあると言えます[8]。未完ではありますが、スピノザの哲学体系の基礎を形成し、後の著作に大きな影響を与えた重要な作品として位置づけられています。

Citations:
[1] https://navymule9.sakura.ne.jp/16Spinoza_vida.html
[2] https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%90%E3%83%BC%E3%83%AB%E3%83%BC%E3%83%95%E3%83%BB%E3%83%87%E3%83%BB%E3%82%B9%E3%83%94%E3%83%8E%E3%82%B6
[3] https://books.rakuten.co.jp/rk/67083877ebd0394898a009bbd9947f3a/
[4] https://www.goodreads.com/book/show/29788424-tractatus-de-intellectus-emendatione
[5] https://books.apple.com/nz/book/tractatus-de-intellectus-emendatione/id1293755451
[6] https://note.com/sugimotoo/n/n76ae6b288813
[7] https://kotobank.jp/word/%E3%81%99%E3%81%B4%E3%81%AE%E3%81%96-3156576
[8] https://www.hmv.co.jp/artist_%E3%83%90%E3%83%BC%E3%83%AB%E3%83%BC%E3%83%95%E3%83%BB%E3%83%87%E3%83%BB%E3%82%B9%E3%83%94%E3%83%8E%E3%82%B6_000000000947456/item_%E7%9F%A5%E6%80%A7%E6%94%B9%E5%96%84%E8%AB%96-%E8%AC%9B%E8%AB%87%E7%A4%BE%E5%AD%A6%E8%A1%93%E6%96%87%E5%BA%AB_14415194
[9] https://en.wikipedia.org/wiki/Tractatus_de_Intellectus_Emendatione
[10] https://bookmeter.com/books/21660901

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