カント『道徳形而上学原論』について

カント『道徳形而上学原論』 倫理学・道徳
カント『道徳形而上学原論』

イマヌエル・カント(ドイツ語:Immanuel Kant、1724年 – 1804年)の「道徳形而上学原論」(ドイツ語原題:Grundlegung zur Metaphysik der Sitten)は、1785年に出版された倫理学の重要な著作です。この作品は、カントの成熟期の道徳哲学の最初の主要な著作であり、倫理学の分野で今日まで大きな影響力を持ち続けています[1][4]。

著作の目的と構造

カントは本書を、道徳理論の基礎を準備するものと位置付けています。彼の目的は、道徳の根本原理を明らかにし、それが私たちに適用されることを示すことでした[1]。

本書は以下の構成になっています:

  1. 序文
  2. 第1章:通常の道徳的理性認識から哲学的認識への移行
  3. 第2章:通俗的な道徳哲学から道徳の形而上学への移行
  4. 第3章:道徳の形而上学から純粋実践理性批判への移行[8]

主要な概念

定言命法

本書の中心にあるのは、カントが「定言命法」(kategorischer Imperativ)と呼ぶ概念です。これは、「自分の行為の格率が普遍的な法則となることを意欲できるような仕方でのみ行為せよ」というものです[1][4]。

善意志と義務

カントは、「善意志」(guter Wille)と「義務」(Pflicht)の概念から議論を始めます。彼は、行為の道徳的価値はその結果ではなく、行為の原則(格率)にあると主張します[4][8]。

人間の尊厳

カントは、人間を目的それ自体として扱うべきであるという考えを展開し、これを人間の尊厳(Würde des Menschen)の基礎としています[8]。

方法論

カントは、道徳哲学は純粋な(アプリオリな)倫理学でなければならないと主張します。彼は、経験に基づく事実は偶然的なものでしかないと考え、道徳法則に必要な必然性は、アプリオリな推論からのみ導き出せると考えました[1][4]。

著作の意義

この著作は、道徳哲学の基礎を確立しようとする試みであり、道徳理論の核心的な概念と原理を説明し、それらが理性的な存在者にとって規範的であることを示そうとしています[1]。

カントの倫理学は、当時支配的だった道徳感覚論や目的論的道徳理論とは対照的に、行為の正しさはその人が選択する行為の原則によって決定されるという立場を取っています[1][4]。

批判的考察

カントの「道徳形而上学原論」は、その影響力にもかかわらず、複雑で難解な部分もあります。特に第3章での「演繹」の試みは、自由の理念に基づく定言命法の普遍的妥当性を証明しようとするものですが、これは非常に複雑な議論となっています[8]。

結論

「道徳形而上学原論」は、カントの倫理学思想の核心を示す重要な著作です。この作品は、道徳の基礎を純粋理性に求め、普遍的で必然的な道徳法則の可能性を探究しています。定言命法、善意志、義務、人間の尊厳といった概念を通じて、カントは理性的存在者としての人間の自律性を強調し、道徳哲学に新たな方向性を示しました[1][4][8]。

この著作は、その後の倫理学の発展に大きな影響を与え、今日でも哲学、特に倫理学の分野で重要な位置を占め続けています。

著:カント,I., 翻訳:篠田 英雄
¥60 (2025/09/12 16:42時点 | Amazon調べ)

Citations:
[1] https://en.wikipedia.org/wiki/Groundwork_of_the_Metaphysics_of_Morals
[2] https://www.gutenberg.org/ebooks/5682
[3] https://www.kinokuniya.co.jp/f/dsg-02-9783787328772
[4] https://navymule9.sakura.ne.jp/Metaphysics_of_Morals.html
[5] https://en.wikipedia.org/wiki/Immanuel_Kant
[6] https://books.rakuten.co.jp/rk/7597118aff0f4a60bb1a745e628a5fb7/
[7] https://www.iwanami.co.jp/moreinfo/tachiyomi/3860390.pdf
[8] https://de.wikipedia.org/wiki/Grundlegung_zur_Metaphysik_der_Sitten

コメント

タイトルとURLをコピーしました