スピノザ『デカルトの哲学原理 -附 形而上的思想-』について

スピノザ『デカルトの哲学原理 -附 形而上的思想-』 西洋哲学
スピノザ『デカルトの哲学原理 -附 形而上的思想-』

スピノザの著書『デカルトの哲学原理』と『形而上学的思想』は、1663年にアムステルダムで出版された重要な哲学書です。これらの著作は、スピノザが生前に自身の名前で公刊した唯一の作品として知られています[1][5][10]。

『デカルトの哲学原理』(ラテン語:Principia philosophiae cartesianae)について

『デカルトの哲学原理』は、デカルトの『哲学原理』を幾何学的方法で再構成したものです[1][7]。この著作は、デカルト哲学の解説書としての役割を果たすと同時に、スピノザ自身の哲学的思想の萌芽も含んでいます[1][5]。

本書は主に3つの部分から構成されています:

  1. 第一部では、一般的な形而上学の問題(神の存在、自由意志、物体と精神の本性など)が扱われています[3]。
  2. 第二部では、精神に関する2つの問題、すなわち(i)精神とは何か、そして精神と身体がどのように関係するのか、(ii)知識の一般理論について論じられています[3]。
  3. 第三部では、感情(スピノザは「アフェクト」と呼びます)の理論と、完全に決定論的な人間心理学が提示されています[3]。

スピノザは、デカルトの思想を忠実に解説しようとしていますが、同時に自身の哲学的見解も巧みに織り込んでいます[8]。例えば、スピノザは物体と精神の関係についてデカルトとは異なる見解を示しています[2]。

本書の特徴的な点は、幾何学的方法(ユークリッドの『原論』やニュートンの『プリンキピア』に類似した方法)を用いて論証を展開していることです[3][5]。この方法は後のスピノザの主著『エチカ』でも採用されることになります[8]。

『形而上学的思想』(ラテン語:Cogitata Metaphysica)について

『形而上学的思想』は、『デカルトの哲学原理』の付録として出版されました[1][5][10]。この著作では、伝統的な形而上学的主題(本質、存在、観念、可能性、必然性、偶然性、持続、時間など)についてのデカルトの見解が説明されています[7]。

本書の特徴は以下の通りです:

  1. 後期スコラ哲学の学説をデカルト的観点から説明しています[5][10]。
  2. スピノザは、デカルトの思想を解説しながらも、巧妙に自身の哲学的見解を挿入しています[7]。
  3. 本書は、スピノザがデカルト哲学から出発しつつ、どのように自身の独自の思想を発展させていったかを理解する上で重要な手がかりを提供しています[7][8]。

『形而上学的思想』では、スピノザは生命を「事物が自らの有に固執しようとする力」と定義しています[2]。これは、後のスピノザ哲学の中心的概念である「コナトゥス(自己保存の努力)」の萌芽と見ることができます。

また、スピノザは本書で、身体と精神の関係についてデカルトとは異なる見解を示しています。スピノザは、デカルトの単純な心身二元論を否定し、身体と精神を一つの実体の二つの側面として捉える見方を示唆しています[2]。

両著作の意義

これらの著作は、スピノザがデカルト哲学をどのように理解し、そこからどのように自身の思想を発展させていったかを理解する上で重要な資料となっています[7][8]。

特に注目すべき点は以下の通りです:

  1. スピノザは、デカルトの方法論的懐疑や「我思う、ゆえに我あり」という原理を高く評価しています[2][5]。
  2. しかし、神の存在証明や心身二元論などの点では、スピノザはデカルトとは異なる立場を取っています[2][3]。
  3. スピノザの幾何学的方法による論証スタイルが、これらの著作で既に確立されていることがわかります[3][8]。
  4. 『形而上学的思想』では、後のスピノザ哲学の中心的概念である「コナトゥス」や「実体一元論」の萌芽が見られます[2]。

これらの著作は、スピノザが当時逆風にさらされていたデカルト主義を自らの哲学の堡塁とし、哲学研究者として「デビュー」するための重要な作品でした[10]。同時に、これらの著作は、スピノザがデカルト哲学を乗り越えて、独自の哲学体系を構築していく過程を示す貴重な資料となっています[7][8]。

Citations:
[1] https://repre.org/repre/vol12/books/01/06.php
[2] https://aasj.jp/news/philosophy/18885
[3] https://iep.utm.edu/spinoz-m/
[4] https://www.britannica.com/summary/Cartesianism
[5] https://ameblo.jp/reading-girls-baseball/entry-12858359169.html
[6] https://bookmeter.com/books/392438
[7] https://en.wikipedia.org/wiki/Principia_philosophiae_cartesianae
[8] https://www.kinokuniya.co.jp/f/dsg-01-9784003361580
[9] https://hackettpublishing.com/philosophy/modern-philosophy/principles-of-cartesian-philosophy
[10] https://www.iwanami.co.jp/book/b626362.html

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